私は以前、絵に書いたようなパワハラ上司のもとで仕事をしていたことがあります。パワハラを実際に受けた経験は、ブログで筆舌に尽くし難いです。
しかし、この経験が現在パワハラを受けている人たちの助けになればと思いこの記事を作成しました。これは大学を卒業した後に、大学病院の医局に入局し働いていた時の話です。
医局制度について
医者や歯医者以外の方にとって「医局」って良く分からないものだと思います。医療ドラマなどで治療技術を競ったり、出世競争をする場として描かれています。そのイメージで大体合っていると言えます。医局とは、会社のような組織です。
診療科ごとの医者や歯医者の集まりとなっています。専門に特化した治療方法を学ぶ場とされており、医局に所属していることが専門医取得の実質的な条件の一つになっています。
医局員の大半は「勉強」の名のもとに無給で働かされているブラックな環境です。それなりの技術と医局への貢献(無給で数年働く)をすると役職に就けます。
役職(教授、准教授、助教)に任命されると、学生への教育を行う対価として大学から給与が支払われるようになります。少なくとも私が所属していた大学病院では、診療行為に対して給与が支払われることはありませんでした。
無給医たちの主な収入は、アルバイトです。週に何日か医局紹介のアルバイト先に行ったり、長期(半年以上)の出張として地方の病院や診療所に契約社員として出稼ぎに行くことになります。そこで頂く給与が生活費になります。医局とは、医者、歯医者専門の「人材派遣会社」としても機能しています。
転機が訪れた
入局後、大学病院で診療を行う日々が半年ほど続きました。そして、地方の病院へ半年間ほど契約社員として派遣され、働くことになりました。
医局の先輩の先生方からは、派遣先の上司の評判が良くなかったこともあり私は不安でした。経験が浅く、一般診療が未熟なので迷惑を掛ける可能性があるという理由で長期出張を拒否しました。
ところが、教授と准教授に出張を強行されてしまいました。私は諦めて出張先の病院へ行くことにしました。
受けたパワハラ一覧
勤務開始2週間くらいまでは問題はありませんでした。しかし、徐々にパワハラが始まりどんどんエスカレートしていった。以下に私が受けたパワハラを列挙します。
規定の勤務時間の1時間前の出勤を強要される
同じ診療科の他の先生よりも早く出勤していないと怒られました。もちろん他の先生方よりも早く出勤する意味はありません。仕事に影響のない範囲で出勤する時間は選べるようにすべきだと思います。
部長が出勤したらすぐに挨拶に行かされる
部長が出勤したらすぐに挨拶に行かないと怒られました。ぶっちゃけ挨拶に行く理由なんてありません。意味があるとすれば、勤務時間に遅刻していないかの確認にしかなりません。
出張医が自分よりも出勤時間が遅いことが気に食わないから強要していただけだと思います。
お昼休みは部長と同じタイミングで取る
これも出張医が自分よりも長い休憩時間を取ることが気に入らないのでやっていたことです。
部長はワーカホリック気味なので、患者を詰め込んでいました。その結果、診療時間が押してしまい毎日の休憩時間は10-15分という短い時間になっていました。本来の休憩時間は1時間あります。
自分の仕事が終わっているのに、意味もなく上司の仕事が終わるのを待つのは苦痛でした。
残業を強要される
診療時間外に訪問診療のカルテの記載を強要されていました。自分よりも早く出張医が帰ることを防ぐためにやっていたことです。他の常勤の勤務医は診療時間中にカルテを記載することが許されていました(アタリマエのことですが)。残業代がつかない契約であったことも影響していると思います。完全なサービス残業でした。
午後6時半に診療が終了してから、毎日夜の10時から12時までかかりました。平均して毎日4時間残業しており、20日間以上の勤務なので過労死ラインの月80時間を越えていました。
部長よりも早く帰ろうとすると院内のPHSに電話がかかってきます。なぜ俺より早く帰るのかと何度も説教されました。逃げ道はありませんでした。
ミスを必要以上説教しながら怒る
長時間残業しながらカルテを記載していると、当然ですがミスが起こります。すると、親の敵のように口撃されました。人格を否定されながら30分以上説教されました。ADHDなどの精神障害があるから精神科を受診してこいなど言われました。
この時はかなり追い詰められていたため、本気で精神科を受診しようかなと考えていました。さらに、ミスが多いという理由で診療をさせないようにされました。私の教育を兼ねての長期出張のはずでしたが、全く仕事を教える気はなさそうでした。最終的には契約期間終了前に自己都合退職扱いで解雇となりました。
高額の忘年会費用の強制負担
忘年会には強制参加させられました。参加費は2万円とビンゴ大会の景品代で約3万円程度かかりました。それに加えて余興までやらされました。半年間限定の契約社員にやらせることではないです。
業務に関係ない資料作成をやらされる
勤務先の業務に関係ない講演会の資料作成をやらされました。もちろん業務時間外(休日)に作成しなければなりませんでした。そのせいで実質的な休日は減ってしまいました。
服がしわになっているといちゃもんをつけられる
服がしわになっているから着替えに行けと言われたことがあります。予備の白衣を持っていなかったので、医局に行って着替えずに診療室に戻る「往復」をしました。するとなぜか「よく着替えてきた」と言われることがありました。意味のないことをやらされて大変な苦痛でした。
歯科衛生士などのスタッフに月1でお菓子を上納する
月1でスタッフに高級なお菓子を自腹で買いに行かされました。スタッフからもお菓子を買ってくるのは当然であると謎の圧力をかけられました。短期の出張医には本当に味方がいませんでした。
パワハラされたときにやっておくべきこと
ボイスレコーダーで録音する
長時間録音することが可能なボイスレーダーを使って録音しましょう。スマホで録音するのもおすすめです。音質を優先するならボイスレコーダー、手軽さやバレにくさが優先であればスマホがいいと思います。
万が一、裁判となったときの有用な証拠となります。私も録音していましたが、裁判はやらなかったので無駄になってしまいましたが。
1点注意点があります。職場の人間への説得に使うのは止めましょう。単純にドン引きされます。病院や医局に提出しても握りつぶされるし、内部告発をやりそうな奴として腫れ物扱いされるようになるのは目に見えているからです。
写真を撮る
暴力を振るわれて身体に痣ができたときは写真を撮って病院へ受診しましょう。裁判を起こす前提なら医者で診断を受けておかないと証拠になりません。また、モノが破壊されたときに写真を撮っておきましょう。
転職サイトに登録して転職の準備をする
パワハラされてると、思考力が低下します。給与が下がる転職であったとしても、心に余裕ができる職場にすぐに転職しましょう。逃げるのが最優先です。
状況が落ち着いたら再度転職して収入を上げるようにすると良いでしょう。
貯金
現職を退職してから転職後に給与を受け取るまでのつなぎの現金が必要です。必要な生活費は貯金しましょう。お金がないといつまでも逃げることができなくなります。
なぜパワハラ上司は病院から注意されないのか
色んな人の話を聞いてみると、パワハラで受付をやっている事務を胃潰瘍にさせて辞めさせていたことが分かりました。でもパワハラ上司はお咎めはなしでした。
なぜお咎めなしなのでしょうか?
その理由は、実力と実績があったからだと思います。当時、病院内の診療科で一番利益を出していたのがパワハラ上司の部署でした。一番の患者数を抱えていたのです。
また別会社から出向していた技工士さんの話を聞いてみたところ、パワハラする相手を選んでやってるとのことでした。院内政治が上手かったので責任逃れが完璧だったのだろうと思います。
だから病院はパワハラが起こっていても部長を辞めさせることが出来ない状況でした。派遣で来ている事務員や出張医を見捨てるほうが病院の利益になるからです。
解雇された後にやったこと
自己都合退職扱いで解雇された後は大学へ戻りました。当時の医局長と話し合いを行い、事情を話しても1ミリもこちらの味方になってくれませんでした。
そういう状況だったので、この医局に残ってもしょうがないと思って即辞めました。今思えば人生でトップ3に入る英断で、退職したことは今も後悔していません。大学の医局を離れたことで、素晴らしい職場に就職することが出来ました。
今思えばここが人生の転機でした。自分に合った職場に勤めたおかげで、診療の技術は向上し、年収がガンガン伸びていきました。実力が付くまでの職場選びは非常に重要であることを実感しました。実力があればパワハラが見逃されるのが日本の文化なので。
大企業や公務員など雇用が安定している職業の方は当てはまらないかもしれませんが、現在の職場が合っていないと思う人は転職しちゃったほうがいいと思いました。
転職前後で役に立った本やサービス
転職支援サイト
まずはここからです。転職エージェントに相談し、お任せにするのがおすすめです。転職会社選びさえ間違えなければ、希望にマッチした会社へスムーズに転職できます。
転職本を読む
私は、「転職後、最初の1年にやるべきこと」という本を読みました。こういった本には、転職先で人間関係をうまく立ち回る方法やコツが解説されています。少なくとも一度は失敗しているわけなので準備しておくに越したことはありません。
まとめ
- パワハラ上司を止めるシステムがない職場から逃げ出したほうがいい。
- パワハラを受けていると精神的な余裕がなくなる、すぐに逃げ出そう。
- 自分に合った職場へ転職しよう。